てるみなの新刊を読みました。3年ぶりなんだ、そうなんだ……楽園web増刊での連載のみなので刊行ペースはどうしても遅くなりがちですが、そうか、3年ぶり……
同じ白泉社のぱらのまも鉄道系というか旅行系ですが、ぱらのまは正統派な旅行系なのに対してるみなはファンタジーというかそんな感じです。現実離れはしているしこわいところもあったりするのですが、イッツアkashmirワールド!という感じで好きです。
発想が柔軟極まりすぎていて読むたびに目から鱗が落ちまくっています、見習いたいです。期待以上というか斜め上から殴りかかってくるように怒涛の展開をかけるkashmir先生には本当に信頼しかありません。帯にある「『死』と隣り合わせの鉄道ファンタジー」も比喩でもなんでもないですからね。死ぬというか下手したら自分(ミナ)の存在が消えてしまうのではないかと思わせるようなものがあります。
特に好きなお話の感想です。
・足湯号
これいきなりkashmirワールド全開に出してきて掴みとして最高すぎる……足湯ってそっちなんだ……あしゆ号が湯本駅に入ってくるときの図でネコバスを思い出しました。一丁前に寄木造やラグジュアリーシートなのがもう面白いです。天才なのかな、天才なんだろうな。必要以上に内装凝らしまくってるのはkashmir先生の趣味も入って売るんでしょうね……謎な情報量が多ければ多いほど混沌としてきて、読んでいて楽しくなります。ミナのテンションの高低差もいいですね、そりゃまあ至極当然の反応なんですけど、そうとはいえ。
・みたかモノレール
kashmir先生がXに投稿してバズっていた回。わたしもこの回がいちばんすきです。
助けた水神が願いを聞いてくれるお話 1/5 pic.twitter.com/WqqkZV6lo2
— kashmir (@picnic2kashmir) 2024年5月1日
読み終わった後の感想ですが「調布から狛江か成城、農大の横通って渋谷か三茶まで延伸してくれ!!!!」でした。あのあたりから調布まで週1でバスで通っていたので……
それにしても水神様がミナの願いを聞いてはい終わりではなくそこから数多の神様を呼び出して会議してなのがファンタジーの中に現実みたいな要素を取り込んでいていいですね。まず水神様がファンタジーだけど……そして井の頭線の神、見覚えしかない顔だし「五両ですし」も五郎とかけてそうだし上手い。神様のモチーフとか考えるとめちゃくちゃ面白いしこういうところに笑える要素詰め込んでくれるのが嬉しいです。
そしてルート選定や鉄道の方式も結構しっかり考えてるのがまた面白いですよね、これは200000%kashmir先生の趣味だと思っています。神様の種類もまた豊富で……トラムやモノレールはともかく高架鉄道の神って高架限定なのピンポイントすぎて面白いです。小田急とかは地上鉄道(でいいのかな)の神と2柱が働いたのかな。
そして過去の人間に働きかけるという現実からまたファンタジーに戻るところが。素晴らしいまでのご都合主義(誉め言葉)で最高です、確かにこれなら現在時点から割と遠くないうちに開業できます。正直「過去のしかるべき時間に戻り人心に働きかける」は思いつかなかったです。天才?
「いやマニアってそういうものだよ」←それは、そう
なんかファンタジーだけどその中に現実っぽさも入り混じっていてとても読んでいて楽しかったです。話が身近だったというのも、あります。
「お、出番かな」「「「いやお前はじっとしてろ」」」←マジでじっとしててね
・相互乗入
この話も好き。てるみな5巻、みたかモノレール、相互乗入、駅歯が3強と思ってます。
強制相互乗入←わかる
精神相互乗入←???????????????
この説明しているおっさんは何者なんですかね……精神相互乗入で一番最後まで正気を保っているのがこのおっさんなのも面白いし結局このおっさんも乗っ取られてるし正気というのがなくて面白すぎました。
「軌間や電圧など設備の差も超越してくる最強の乗入方法といえます」←あまりに強すぎる、京阪も天満橋から谷町線に乗入しないか???????
おっさんは三嵜口に着いた後はどうしたんでしょう、油壷の酒瓶持ってるのがおっさんなのかな。おっさんが何者かがとても気になります。
てるみなはカオスなお話がたくさんありますが、その中でもカオスが極まっていてかなり好きです。
・未成線
「これ…コンクリートだ」から「もしかして鉄橋の橋脚跡では?」となるミナの観察眼、好き。たしかに橋脚跡っぽい、今福線の遺構でこんなのあった気がする……
「佐久間」は佐久間姓?って最初は思っていたのですが、その後の怒涛の「五新」「今福」「阿佐」「白糠」「興浜」で察しました。「善光寺白馬」は知りませんでした、長野と白馬を結ぼうとした私鉄なんですね……
「列車とかトロッコ走らせないの?」「ここまで作ったなら」ってミナが言った後の反応がまた哀愁ですね。ここまで作ったのに……
「線路を敷いていた」「列車の走らない線路を」で回想を締めるのが素敵ですね。
廃線跡を巡る趣味は特段あるわけではないのですが、広島時代に三江線可部線今福線の跡を沿ってツーリングしてたりしたので興味がないわけではないのです。五新線跡も行ってみようかなあ。
・駅歯
歯の中で駅ができてしかもその駅が少しづつ大きくなるっていうのが面白いしとても好みだ……って感じです。
「最初は電停みたいな感じだったがホームが出来、側線が敷かれた」←なるほど
「待合室が建ち、多分次は本屋が出来て」←わかる
「2面3線になるのだろうか」←ここがツボすぎてダメだった
2面3線になるのだろうかのチョイスが良すぎる……設備が増幅していく感じなら確かに待避線増やすか複々線になるのかな?ここ何度読んでも笑っちゃいます。
逆に駅歯の治癒過程も線路が少なくなったりと、現実には側線の撤去や交換設備の撤廃がそんな感じがするのでこういうところが現実に沿っていくのがとてもいいですね。なんか発想の勝利という感じ、もっとやってほしいです。
やっぱりkashmir先生の作品は期待をはるかに上回ってきて、最高です。今月末は大本命のぱらのま6巻です。はやく読みたい!!!!!!!!!!!!!!